【黒尾鉄朗】今はまだ【小説】
黒尾鉄朗 小説 ハイキュー!!最高ランク : 154 , 更新:
*
heroine's name:那智 美咲 Misaki Nachi
__おれには、どうしても分からないことがある。
「美咲」
「……あ、研磨くん」
部活終わり。体育館の扉を開けると、階段に腰掛け、膝に顔を埋めるその人が居た。
彼女はおれの声が届くと、顔を上げて振り向いた。
視線が交わると、彼女はいつものように笑う。ただ……その笑顔はどこかぎこちない。見ると、目には今にも零れそうな水滴が溜まっていた。
「クロなら、多分もうすぐ出てくるよ」
美咲はコクリと頷いて、ありがとーと微笑む。
「どういたしまして」
彼女の脇を通り過ぎ、部室に向かう。普通なら立ち止まって話を聞くべきなんだろうけど、美咲がそれをして欲しいのはおれじゃない。
「クーローっ!」
後ろから大きな声が聞こえて、少しだけ視線を向ける。
そこにはギュッとクロに抱き付く美咲と、呆れたようにそれを受け止めるクロが居て。
……うん。いつも通りの光景だ。
*
『ちょっとクロ、何?』
『あ、君が噂の研磨くん?』
『……誰』
『私、クロの友達の那智美咲っていうの! 研磨くん、先輩・後輩とか苦手なんだよね? 「美咲」でいいよ。よろしくね!』
おれ(はクロに無理矢理連れられ)と美咲が初めて言葉を交わした昼休み。
コミュニケーションが好きではないはずのおれの心の中に、美咲は驚く程スッと入り込んできた。
__さて。まあそれはいいとして。
おれがどうしても分からないことについてだ。
「相変わらず仲良いよな、あの2人」
帰り道。美咲とクロの数歩後ろを歩くバレー部3名。おれ、虎、リエーフだ。
虎が言う(その言葉の中に羨ましがる気持ちがあることは言うまでもない)。
前を歩く2人の間に、距離はほとんどない。
「黒尾さん、彼女居たんですね!」
……そう。それは傍から見れば、彼氏・彼女の距離感だ。
でも、
「違うよ」
「え?」
「クロと美咲は付き合ってないよ」
おれが、どうしても分からないこと。
「あ~、そっか。最近、那智さん来てなかったもんな。リエーフは知らないのか」
「えぇ?! あの2人、付き合ってるんじゃないんですか?! さっき抱き付いてたのに?!」
__クロと美咲は、どうして『友達』なのか。
*_*_*_*_*
「で? 本日はどうなさったんデスカ、お嬢さん」
隣を歩く美咲に問い掛ける。
「……フラれた」
ポツリ。呟きと共に、美咲の頬を雫が伝った。
きっと、泣くのを我慢し続けていたのだろう。コイツのことだから、断られても必死で笑って「ありがとう」とでも言ったのだろう。相手が罪悪感を感じることのないように。コイツは……そんな、馬鹿みたいに優しい奴だから。
まあ、そういうトコロが好きなんだけど。
「お前、ずっと好きだったもんな」
「……うん」
「1年の時からだっけ?」
「……うん」
高校に入ってから出会った美咲とは、何かと馬が合って、気付けば多くの時間を一緒に過ごすようになっていた。
「美咲」
美咲の傍に居ると安心する。その『安心』が恋だと分かったのは、つい最近。
「俺は、ずっと傍に居るから」
涙を拭いながら顔を上げ、美咲は笑う。「もうすぐ卒業なんだから無理だよ」、と。
「卒業しても傍に居る」
驚いたように目を見開いてから、ふわりと微笑んだ。花が咲くように、柔らかい笑み。
「ありがと、クロ」
……お前、絶対意味分かってないだろ。
「クロ、大好き!」
__今はまだ、これでいいか。
俺は、そんな風に思ってしまうのだ。
*_*_*_*_*
こちらも先程の投稿同様、短編集で書いたものです。
あの短編集、なんで失恋物とかばっかなんだろう……。((
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