桜舞う頃にまた会いましょう

小説 桜舞う頃にまた会いましょう
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最高ランク : 134 , 更新: 2018/02/04 3:06:06

"プロローグ"


ぷくぷく。ぷくぷく。
泡が空へ上っていく。流れも上へ上へ上っている。なのに、私は沈んでいた。私は朦朧とする意識の中、動かない右腕を強く握る。
死ねない。まだ、死ねない。せっかく会えたのに、すぐに死んじゃうなんてもったいない。まだ一緒にいたい。
でもどうあがいたって私は人間で、人間って言うのはいずれ死んでしまうものだ。その"いずれ"が今なんだ。
でも死ねない。今は、今だけは。
たくさんの矛盾した"でも"が頭を飛び交って、気がついた頃には私は意識を飛ばしていた。



"転校生"

__桜は綺麗だ。だから大好き。
淡くグラデーションのいい桃色の花、少しでこぼこしているが安心する幹。なによりも、儚い命であることが好きだ。最後のは私の持論になってしまうけど。それに私の名前の一部にもあるのだ。好きになるのは必然的じゃないだろうか。
だからいつのまにか私の身に起きた「桜の花びらが体から出る」不思議現象も、私は好きだ。
始めてみたときは驚いてしまったけど、二度目からは出す出さないの制御ができるようになって、三度目からは意のままに操ることができるようになった。この不思議現象は好きだし、自分で言うのもなんだけど、綺麗なのだ。私の体から出る桜の花びらは。
だからなのか、この不思議現象が出た時点では私の日常が揺らぐことはなかった。
日常が変わってしまったのは、ある梅雨の晴れた日。
その日は珍しく、担任より副担任の方が来るのが早かった。副担任は珍しく、とてもにこにこしながら教室に入ってきた。
「せんせー、なんで田中来ないの~?」
クラスメイトの誰かがそういった。
副担任は怒った様子で(とはいっても笑顔だったのだが)そのクラスメイトを指摘する。
「こら、田中先生でしょう? 田中先生はね、今外せない用事があるから職員室にいます。もう少しで来るはずだから待っててね」
その言葉を合図に周りは喋り始め、私は本を読み始める。大抵こういうときは自由に行動していい。うちの学校は素行のあまりよくないやつばかりだから、喋っていても邪魔にならない程度の声なら見逃してもらえる。その方が教師は楽だし、生徒にとっても楽だから。みんながみんな、楽を優先した結果だ。
読み始めて何ページか進んだ頃に、教室のドアが開く音が聞こえた。同時にパタリと声が消える。さすがに私だけ読んでばかりだったら注意されるかもしれない。それは回避したい。本を閉じて顔をあげた。

顔をあげて、うんざりした。

担任の隣に見たこともない女子がいたからである。このうるさい教室に、新しい生徒が来るのはうんざりだ。転校生なのだろうか。こんな時期に転校生なんて珍しい。
私が面倒くさそうな表情をしているのに対して、いつも面倒くさそうな表情の担任にしては珍しく真顔で私達と向き合っていた。
「お前ら、転入生を紹介する。黒田、自己紹介」
紹介するとか言っておきながら本人に自己紹介を任せた担任は後ろに下がる。やっぱり何も変わってない、本当に面倒くさがりなやつだ。なぜか、それに安心してしまう。
私は机に頬杖をついて担任が黒田と呼んだ女子生徒を眺めた。さらさらの長い黒髪に、淡い紫色がかった鋭い目。立っている姿勢もとても綺麗な人だ。
黒田サンは無言で一歩前に出てくると息を吸い込んだ。
「黒田、桜です。親の転勤でこっちの学校に転入することになりました。よろしくお願いします」
最後にふんわり笑うと黒田サンは一歩下がる。クラス中がきっと、綺麗だと思っただろう。不覚だけど、正直私も思った。だから人気者になるのも、そう遅くはなかった。さすがに二日で学年全員が知ってたときは驚いたけどさ。
かくして、転校生はやって来たわけだ。

ちー


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2018/02/03 9:52:25 ちー 2 1


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2018/01/31 7:04:05 ちー 6 2

ほい、こんちは。 ちーです。 内容は題名通り。本日は皆既月食ですわよ。 ニ...


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