せめて、「逃がした魚はこんなに大きかったのか」と悔いてくれたら、と思ってくれたなら。

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せめて、「逃がした魚はこんなに大きかったのか」と悔いてくれたら、と思ってくれたなら。
梨月さんの企画です。前は一度挫折しましたので、今回は最後まで書ききりたいと思います。スマホで何処までいけるのか……。






社は綺麗に掃除され膝まで伸びていた草も刈り取られて神社全体がこざっぱりした雰囲気に包まれている。夜は更け降り注ぎそうな星々が赤いでこぼこした屋根の上に堂々と佇んでいる様子は不思議と可笑しく川端は込み上げてくる高笑いを踏ん張り坂を登って坊主頭の地面を蹴った。見渡す限りカンランとした薄青の景色に上気した頬が更に色づいた。霜で薄緑色へと変化した草を跳ね踊るようにして社を回り急にばたりとその場へ倒れ込んだ。凍った草の葉先が頬に突き立てられむず痒い気もしたが川端はさして気にもとめず両腕両足をだらしなく地面に垂れ吐息が白く天へと昇って消える様子を詰まらなさそうに見つめるばかりであった。

まあるく肉付きのよさそうな頬にはベッタリと人の手形がその跡を残しており少し目尻の尖った目の下には赤い水膨れのような後が蛇の通った草原のように尾を引いており乾いた跡が見える。二三回目を擦ると美しくも悲しい歌声が遠くの方から聞こえるような気がした。ここから見える山々より遠く手を伸ばす寒空より近しいところから聞こえるそれは不思議と川端の冷えた胸に灯も灯し焚き付けるのであった。闇の奥の方を目を凝らしてよくよく見ると白装束に長い裾を引き摺ったなにやら背の高い男のようなものが硝子に写ったようにぼやけてその輪郭すら揺らいでいる。

川端は非常に冴えた子であったが非常に好奇心旺盛な子でもあり、この度は女をも凌駕する好奇心が打ち勝ちその懐かしさもあってか声をかけてしまった。男のようなものはゆっくり川端を振り返ると驚いたような素振りを見せ眉をひそめひきつった笑いを浮かべたばかりで何事も口を利かなかった。それでも川端は諦めず何度も声をかけた。

「今日はもう冷えますね」「氷点下をいったそうで」「こんな時間に私のような者が居て怒らないのですか」「遠くの都会ではまた交通機関が麻痺したそうですよ」「如何したのですか」「聞いていますか、おい、聞こえていますか」

そう言っても男のようなものは何も口を利こうとはせず、しかし川端から遠ざかることもまた近寄ることもせず只同じ場所で川端を見ているだけしている。とうとう眉の一つも動かさなくなり一揺れもしなくなったのを見て川端は自分の思い違いだと考え始めた。マネキンか、そうでなくとも人を象った人形を真夜中それも人気のない神社に人など居ないと高を括りこっそり人形を持ち出して悪戯を仕掛けようとしたところ、彼が居たものだから声をかけられ驚いて人形だけを置いて去って行ったのだろうか。

すると川端は勢いよく起き上がり、己の中でそう結論づけると躊躇ない足取りで人形へと近づき人形も又川端がこちらに近づいてくると思うと一歩ずつ川端に合わせ後ずさっていった。川端は尚も人形に近づこうと懸命に距離を縮めるべく歩みを進めるが殆ど最初と同じくらいの距離を保たれ一向に縮む気配のないまま朝焼けが回りの空気を揺らめかせてその姿を現した。山の向こう側から雨のつんと鼻を刺す匂いが風によって川端と人形の鼻を擽った。雨が降る、そう思った。

段々と朝焼けがその姿を見せる中、人形のようなものは少しづつ坊主頭に影を落とし冬の乾いた澄んだ空気を通して流れる薄い日の光を浴びてその姿を擦ったように薄く伸びていく。好機が訪れたと川端がその元まで駆け寄ると既に人形の跡は影も形もなく人形が佇んでいた場所には紫色の小さな花弁に朝露を乗せて輝く林道が一輪咲いているだけであった。

せめて、「逃がした魚はこんなにも大きかったのか」と悔いてくれたら、川端の心は救われる心地がした。






……何でしょうね、これ。いやぁ何も考えずにいたらこれですよ、本当。得意な ジャンルで攻めてはいるんでしょうけれど、なかなかに私の書く話は現実味を帯びませんね。意味は有るようで無いようなものなので、まあそこは皆さんの解釈にお任せします。

ここから雑談タイム。

本日、コピック六本と小説五冊を購入致しました。
スト表紙の安吾が印刷された堕落論、チェック柄がオシャンティーな銀河鉄道の夜、表紙だけで感動できる雪国、太宰さんがめっためたに批判したという暗夜行路、そしてひしゃを加えた石像が特徴的な姑獲鳥の夏。

姑獲鳥の夏はドラマだか映画だかをシネマで見て感動し、結構前から欲しかったものです。

世界観が本当にもうドツボなんですよ。このねー、何とも言えぬ感じかねー、本当に好き。又観たいです。是非観たい。次は八月の夏休み真っ只中!って時に夜八時辺りから祖父母家で従兄弟達と大きいテレビで観たいです。
従兄弟は字面のまま、男ばかりでそれも三人兄弟のみ。私は長男と三男とよく話します。次男は同年齢なのですがあまり話が合わないんですよね。
長男はオタク趣味、三男は精神年齢が一緒です恐らく。

ではでは皆さん、夜も更けてまいりました。私は雪国の続きが先程から気になって仕方ないのでこれにてドロンさせて頂きます。



ドロン、パッ!

二代目北斎


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